日本時間2017年9月23日5時54分、南極点で行われている世界最大のニュートリノ観測実験IceCubeにより、高エネルギー宇宙ニュートリノ事象が検出された。「IceCube-170922A」と名付けられたこのニュートリノ事象は、千葉大学を中心に開発が行われたニュートリノ速報システムによりその情報が全世界に即時配信され、様々な天体観測施設が追観測を行った。結果、宇宙ニュートリノの到来方向に、巨大ブラックホールを持ち非常に強いγ線を放つブレーザー天体TXS0506+056が確認され、γ線天体が宇宙ニュートリノ放射源であることが史上初めて明らかになった。

 IceCubeは、世界12か国49の研究機関による国際共同プロジェクト。日本からは唯一、千葉大学が正式メンバーとして参加している。
本研究では、これまで謎であった宇宙ニュートリノ放射源天体の同定を目指し、検出された宇宙ニュートリノの到来方向等の情報を元に世界中の観測施設が追観測を行う「マルチメッセンジャー観測」という新しい手法を開拓。宇宙ニュートリノ事象をリアルタイムに同定するアルゴリズムは、千葉大学を中心に開発され、2016年4月に運用が開始した。

 IceCube-170922Aは、到来方向が精度よく推定されるなど好条件で検出された。速報を受けた広島大学のかなた望遠鏡は、ニュートリノ事象検出20時間後に観測を開始。ニュートリノの到来方向にあるブレーザー天体TXS0506+056が増光していることを発見し、また通常をはるかに上回る輝度でγ線を放射していることを発見した。

 ニュートリノとγ線増光の同時観測が偶然起こる確率は0.003%程度で、この天体が高エネルギーニュートリノ放射源であることが統計的にも検証された。この成果は、超高エネルギー宇宙線放射機構を理解する重要な一歩といえる。

論文情報:【Science】Multimessenger observations of a flaring blazar coincident withhigh-energy neutrino IceCube-170922A
Neutrino emission from the direction of the blazar TXS 0506+056 prior to the IceCube-170922A alert

大学ジャーナルオンライン編集部

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