広島大学の坂口剛正教授、杉山政則教授らのグループはウイルスが増殖を抑制するシステムから逃れる仕組みを解明しました。ヒトパラインフルエンザウイルスが引き起こす肺炎や気管支炎などの治療法につながるかもしれません。

 ヒトはウイルスに感染するとインターフェロンという物質を出してウイルスの働きを阻害しますが、ウイルスもその妨害から逃れる仕組みを持っています。ヒトパラインフルエンザウイルスはCタンパク質の働きで宿主のインターフェロンの作用から逃れていることが知られていました。しかしこのメカニズムの詳細はまだ分かっていませんでした。
 グループはこのメカニズムを明らかにするためにウイルスのCタンパク質とヒトのインターフェロンの作用に関わるタンパク質を大量生産し、これらの複合体の結晶を作製しました。放射光を用いて解析をすることでタンパク質の3次元構造を明らかにしました。その結果、Cタンパク質がヒトのタンパク質の穴にはまるような形で結合することで、その働きを阻害している様子を観察することができました。もしCタンパク質がヒトのタンパク質に結合する前に、安全な物質で蓋をしてやることができれば感染症の治療につながるでしょう。

 このように病原体の活動を分子レベルで阻害する薬剤を分子標的薬といい、色々なウイルスについてどのタンパク質に対してどのように作用するのかを解明する研究がすすめられています。放射光による解析で立体構造が明らかになれば、コンピュータシミュレーションなどによって蓋をする物質をデザインすることも可能になります。こういった医薬品のデザインの研究は今後どんどん盛んに行われるようになっていくことでしょう。

中国地方の大学

グローバル人材を持続的に輩出。知を創造する世界トップ100の大学へ

「平和を希求する精神」、「新たなる知の創造」、「豊かな人間性を培う教育」、「地域社会・国際社会との共存」、「絶えざる自己変革」の5つの理念の下、11学部11研究科を擁する日本でも有数の総合研究大学。未知の問題に自ら立ち向かう「平和を希求する国際的教養人」の育成[…]

大学ジャーナルオンライン編集部

大学ジャーナルオンライン編集部

大学ジャーナルオンライン編集部です。
大学や教育に対する知見・関心の高い編集スタッフにより記事執筆しています。
記事内容等に関する問合せ・ご意見はこちらからお願いします。