慶應義塾大学医学部微生物学・免疫学教室の本田賢也教授をはじめとする共同研究グループは、健常者の便中から、免疫細胞CD8陽性T細胞(以下、CD8T細胞)を活性化させる11種類の腸内細菌株の同定・単離し、これらの菌株をマウスに投与することで、感染症や腫瘍増大が抑制されることを示した。

 消化管には多様な常在細菌が存在し、ヒトの免疫系や生理機能に強い影響を与えることが知られているため、消化管常在菌はさまざまな疾患に対する新しい治療法・予防法の標的として注目されている。CD8T細胞は主に細胞内寄生細菌の感染防御や抗腫瘍免疫応答に重要な役割を担っているため、その細胞数は免疫機能の活性に関与すると考えられる。しかしながら、宿主の免疫系を調節するヒト由来腸内細菌株はあまり同定・単離されておらず、特に、CD8T細胞と腸内細菌の関係は不明であった。

 そこで同グループは、健常者の便サンプルを無菌マウスに投与し、それによって誘導されるCD8T細胞から細菌株を取得することで、最終的に腸内細菌11菌株の単離・同定に成功した。そして、これらの菌株が協調的に働くことでCD8T細胞を強く誘導することを突きとめた。さらに、単離した11菌株をマウスに投与し、これらの菌が病原性細菌に対する感染抵抗性や抗がん免疫応答を強めることを明らかにした。

 本成果は、今後、ヒトにおける感染症やがんに対する予防・治療法の開発につながると期待される。

論文情報:【Nature】A defined commensal consortium elicits CD8T cells and anti-cancer immunity

大学ジャーナルオンライン編集部

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