東北大学の阿部高明教授、岡山大学の林謙一郎教授、自治医科大学の小坂仁教授、筑波大学の中田和人教授らは難治疾患であるミトコンドリア病の進行を抑える効果がある化合物を開発しました。安全性が確認され次第ミトコンドリア病患者の治験へ入る予定です。

 ミトコンドリアは細胞内小器官の一つです。酸素を消費して細胞内でエネルギー源として使われるATPという物質を産生する工場の役割を果たしています。遺伝性のミトコンドリアの機能異常により細胞内でATPが産生されなくなる疾患がミトコンドリア病で、日本では700人ほどの患者が確認されています。幼児期から神経、筋肉、循環器、目、消化器など様々な器官に症状が現れ、進行も早い一方で有効な治療法はありません。これまでは症状が出た器官に対して対症療法を行う以外に対策がありませんでした。

 尿毒症患者の血中物質を解析していた東北大学のグループは、内因性の化合物の中にATPの産生を亢進する作用があることを発見しました。さらにどの化合物にその効果があるのかを調べるためにミトコンドリア病患者の細胞に投与したところ、MA-5 という化合物を投与した時にATPが産生されることを突き止めました。さらに細胞だけでなくミトコンドリア病のマウスに投与したところ、目に見えて延命できることも確認できました。今回の成果はこれまで治療法がなかったミトコンドリア病の治療薬につながる可能性があります。

 MA-5はすでに安全性を確認する試験に入っており、国内、国際特許の出願も完了しています。日本発の新薬として医療・医療産業の発展にも大きく貢献することになるでしょう。また、ミトコンドリアの機能異常は筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、アルツハイマー病、糖尿病などにも関わっていることから、これらの疾患に対する治療効果も期待できます。

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