総合研究大学院大学の鈴木俊貴氏を中心とする研究チームは,鳥類の一種シジュウカラに,単語の組み合わせによる情報伝達能力が進化していることを発見。ヒト以外の動物に言語能力が存在することを世界で初めて実証しました。

 単語を組み合わせて文章をつくる能力(統語)はヒトに固有に進化したとされ、実際、チンパンジーなどの霊長類にそのような統語能力は見付かっていません。研究チームの過去の研究では、シジュウカラが多種類の鳴き声を状況によって使い分けることが分かっていました。本研究は、シジュウカラが鳴き声の組み合わせによってどのような情報を伝えるのかを検証するものです。

 シジュウカラは「ピーツピ」という甲高い鳴き声で「警戒しろ」、「ヂヂヂヂ」という濁った声で「集まれ」という意味を伝えます。実験により、これらの音声を録音してスピーカーから再生すると、実際に警戒行動と音源に接近する行動を取ることを確認しました。次に、二つの音声を組み合わせた「ピーツピ・ヂヂヂヂ」を再生すると、周囲を警戒しながら音源に接近しました。しかし、「ヂヂヂヂ・ピーツピ」と順番を入れ替えて再生すると反応がみられませんでした。このことから、音声の組み合わせにより意味を組み合わせ、さらに、特定の文法規則に従って情報を伝えていることが分かりました。今回の成果は、統語能力がヒトに特有だとする、ダーウィン以来の科学的憶測を覆す画期的なものだとしています。

 シジュウカラには、「ヘビ」や「タカ」の存在を示す名詞のような鳴き声など10種類以上の音声要素を組み合わせて、175種類以上のユニークな鳴き声を発することがわかっています。今後は、「ピーツピ」や「ヂヂヂヂ」以外の音声要素による情報伝達の内容を明らかにし、同様の能力を他の鳥類でも検討する予定だとしています。

大学ジャーナルオンライン編集部

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