東京大学の林久允助教を中心とした研究グループは、小児の難病である進行性家族性肝内胆汁うっ滞症2型(PFIC2)患者を対象に、大学発の医薬品候補であるフェニル酪酸ナトリウム(NaPB)の有効性と安全性を確認するための第II相試験(医師主導治験)を開始する。治験調整医師は近畿大学の近藤宏樹講師。PFIC2に対する医薬品開発としては世界初になる。

 PFIC2は小児慢性特定疾病に指定されており、無治療の場合、幼児期に肝不全へと進行し死に至る難病だ。現在、肝移植が唯一の治療法だが、ドナー不足や身体的・経済的な負担の大きさなどの問題から薬による治療法の開発が切望されている。

 PFIC2はBSEPという遺伝子の変異が原因となり発症する。研究グループは、PFIC2患者の多くに、肝実質細胞の毛細胆管側膜におけるBSEP発現が減弱し、肝実質細胞当たりの BSEP機能が低下していることを突き止めた。さらに、尿素サイクル異常症の治療薬であるNaPB が、BSEPの細胞膜発現量を増強することを見出した。そこで、動物実験や過去のデータの解析の結果を踏まえ、PFIC2患者を対象としたNaPBの用量漸増試験を行ったところ、PFIC2に対する有効性が示され、薬剤に起因する副作用も認められなかった。

 以上の成果を経て、NaPBの薬事承認を目指して医師主導治験を計画。大阪大学医学部附属病院未来医療開発部未来医療センター、国立成育医療研究センターが支援する。治験では、治験薬を24週間患者に投与し、肝生検による肝組織像の変化からその有効性を評価する。2018年3月までの治験期間に全国6施設でPFIC2患者6名が参加予定。今回の治験により、大学発の創薬研究による難病の医薬品開発が大きく前進するものと期待されている。

大学ジャーナルオンライン編集部

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