名古屋大学の渡邉智彦教授、日本原子力研究開発機構の井戸村泰宏研究主幹、核融合科学研究所の石澤明宏助教らを中心とする研究グループはスーパーコンピュータ「京」を用いた研究で、核融合プラズマ中の電子とイオンの間に起こる相互作用のメカニズムを明らかにしました。

 核融合反応は物質を構成する原子の核からエネルギーを取り出す方法です。現在の原子力発電に使われている方法は巨大な原子核を分裂させることでエネルギーを取り出すため多くの放射性廃棄物を生み出します。それに対して、核融合は水素原子などの小さな原子核を融合させることでエネルギーを取り出します。このため放射性廃棄物が少なく抑えられるほか、取り出せるエネルギーが大きい、制御不能になると反応が止まるなどの利点があります。一方で反応を起こすのが難しいため未だ実現に至っていません。

 核融合反応の方式のうち、古くから研究されているのが磁気閉じ込めという方法です。強力な磁気を使いプラズマを狭い炉の中に閉じ込めることで、1億度の高温を作り出し原子核を融合させる方法です。このメカニズムの解明のためにはプラズマの中に含まれる電子とイオンがどのように相互作用を調べる必要があります。しかし、非常にサイズが小さい電子と巨大なイオンの相互作用を調べるには極めて大規模なコンピュータシミュレーションを実施する必要があります。研究グループは「京」の高い演算性能をフル活用することで、これらを正確にシミュレーションすることに成功しました。プラズマ閉じ込めの性能を測定する技術の大きな進歩が期待できます。

 核分裂反応を利用した原子力発電の継続に疑問がもたれる中、核融合反応は人類がエネルギー問題に立ち向かう一つの答えになるかもしれません。今回の研究成果は核融合発電の実現に貢献することでしょう。このように人類の未来を繋ぐために「京」は科学現象を解析し続けています。

出典:【日本原子力研究開発機構】核融合プラズマ中の乱流が織り成すマルチスケール相互作用―スーパーコンピュータ「京」で得られた新発見―

名古屋大学

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