東京大学の飯野雄一教授、宮崎大学の井田隆徳准教授らのグループは、国立循環器病研究センター、久留米大学との共同研究のもと、線虫より新しい生理活性ペプチドの発見と受容体の同定に成功し、これらが飽食の制御を担うことを新たに見出した。

 動物は食餌が豊富な時、枯渇な時に応じて行動や代謝を切り替える。これは複雑かつ精巧に制御される機能で、ヒトでは多くの制御因子のペプチド(少数のアミノ酸が結合したタンパク質)が知られる。このうち哺乳類におけるニューロペプチドY(NPY)は神経系による摂食制御に重要とされるが、類似したペプチドは無脊椎動物に存在せず、その進化的起源は不明だった。

 これまで宮崎大学グループは、摂食制御を担う未知のペプチド性因子に注目し、哺乳類と無脊椎動物の両者の研究を進めてきた。ショウジョウバエにおいて哺乳類NPYによって活性化される受容体(CG5811)に着目し、さらにその活性化因子を探索。その結果、新しい生理活性ペプチド(dRYamide)を発見していた。

 今回、東京大学と宮崎大学のグループは線虫に着目し、GC5811を発現させた培養細胞に線虫の抽出物を作用させ、この受容体の活性化を指標にLURY-1と命名したペプチドの単離に成功。LURY-1はdRYamideと構造が類似し、咽頭(餌を取り込む喉の器官)にのみ発現する。さらに、餌が多く咽頭が活発に活動しているときに分泌され、神経細胞に作用して餌の取りすぎを制御することが分かった。さらに産卵を促進する作用があり、その結果線虫は餌の多いときに卵を産むことが判明した。

今回の発見は線虫に限らず、ヒトも含めたすべての動物に共通な摂食制御のしくみの理解、さらにヒトの過食・拒食の原因探求につながることが期待される。

論文情報:【eLife】Luqin-like RYamide peptides regulate food-evoked responses in C. elegan

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