兵庫教育大学大学院連合学校教育学研究科博士課程の小山和男氏と同大学院教科教育実践学専攻自然系教育連合講座の庭瀬敬右教授は、創造性の時間発展の数理モデルを世界で初めて発表した。

 数理モデルは、理論化学や応用化学、経済学、社会学などの様々な分野で起こる現象を説明・予測するためのツールとして、そのニーズが年々増大している。一方で、教育学の分野や創造性の領域では、現象が多様で多くの要素が関係していることから、これまで数理モデルはほとんど提案されてこなかった。

数理モデルの構築によって学びのメカニズムや創造性のプロセスが明らかにされ、予測可能となれば、これらの分野で教育・研究の一層の進展が期待できる。とりわけ「創造性の発現」に関しては、心理学や脳科学において最重要課題の一つとされ、様々な観点から研究が行われてきた。

こうした中、本研究では「創造的な態度」に注目。因子分析によって抽出された創造的態度の二つの主要因子(努力・持続性と自主・独自性)と、それらに影響を与える外力(校内テストなど)と内力(感動体験や熱心に行った体験)をモデル構築の要素とした。これらの関係に対して非線形動力学のカオス理論の線形近似と量子論の古典的近似を用いてモデル化を行い、創造性発展の数理シミュレーションに成功したという。

今回提案された数理モデルは、ゆとり教育やつめこみ教育、生きる力の育成といった教育的課題にも関わる「創造性教育」の方向性を議論するためのプラットホームとなることが期待される。また、「教育学における動力学的な数理モデリングの適用」という新たな研究手法を提案するものとしても大きな意義を持つ。

論文情報:【NeuroQuantology】A Linear Approximate Model of Creativity in Quantum and Chaos Theory

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