大阪大学の村上匡且教授らの研究グループは、「マイクロバブル爆縮」について3次元シミュレーションを行い、バブルの最大圧縮時の密度が、恒星の終末期(白色矮星)内部の密度に匹敵する、個体密度の数十万~百万倍に増大することを発見した。

 真空は、素粒子である電子・陽電子という「粒子と反粒子のペア」が超短時間の間に生成・消滅を繰り返している。これらのペア生成粒子を、我々の空間に長時間出現させるには、現在のレーザー技術が達成できる電界値の一千万倍以上が必要とされる(この電場強度はシュウィンガー極限と呼ばれる)。

 研究グループは2018年5月に、ミクロンサイズのバブルを内包する水素化合物の外側から数十フェムト秒(1フェムト秒は10の15乗分の1秒)の長さの超高強度レーザーを照射し、バブルがナノメートルのスケールに収縮した瞬間に起こるマイクロバブル爆縮という特異な生成原理を世界で初めて発見した。

 今回、超高強度レーザーを用いたマイクロバブル爆縮の3次元シミュレーションを行い、バブルの最大圧縮時の密度は原理的に、シュウィンガー極限電場を達成し得る、個体密度の数十万~百万倍にまで増大することを発見した。これは角砂糖大で数百キログラムの重さに相当。またこの時のバブル中心でのエネルギー密度は太陽中心より百万倍程度高いことが分かった。これらの値は地上では達成不可能とされていた。

 今回の研究成果は、ブラックホールや高エネルギー粒子の起源解明、核融合反応によるコンパクトな中性子線源として医療・産業への応用研究への貢献、さらにはビッグバンに象徴される宇宙開闢の謎の解明が期待される。

論文情報:【Physics of Plasmas】Relativistic proton emission from ultrahigh-energy-density nanosphere generated by microbubble implosion

大阪大学

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