群馬大学の柴崎貢志准教授らは哺乳類の脳で知能が発達した理由を解明することに成功しました。脳の中にある温度センサーとして知られているTRPV4という分子が、哺乳類の体温である37℃の環境で神経細胞を活性化させる働きがあることを突き止めたのです。

 ヒトなどの哺乳類は脳内の温度を37℃付近に保つために多くのエネルギーを費やしています。例えば雪山で遭難して体温が30℃以下になっても、脳内の温度は37℃に保たれることが知られています。しかしこれまでなぜ脳の温度を37℃に保つのかという理由にはあまり目が向けられてきませんでした。柴崎准教授はこれまでに脳の海馬という部位に34℃以上で働く分子、TRPV4が多く存在することを発見していました。そして今回の研究ではこのTRPV4の役割を詳しく検証した結果、この分子が神経細胞が興奮するための環境を生み出す役割を持っていることを突き止めたのです。これは恒温動物、つまり哺乳類で知能が発達した理由にも密接に関係する発見です。

 海馬は記憶形成に必要な器官ですが、TRPV4が多く存在する部位でもあります。今回はTRPV4を作ることができないマウスと正常なマウスから取り出した海馬の標本中の神経細胞の働き具合が温度によってどのように異なるかを調べました。生きた哺乳類の脳よりも低い30℃では2種類のマウスの神経細胞の働きに違いは見られませんでした。一方37℃の環境では通常のマウスの脳で細胞の活動が著しく増加していることを見出しました。このことから哺乳類は脳の温度を高く保つことでTRPV4が働き、神経細胞の働きが活性化した状態となっていると考えることができます。

 柴崎准教授は、これによって哺乳類のような恒温動物がなぜ冷血動物よりも高度な行動が可能なのかを分子レベルで明らかにすることができたとしています。また、てんかんのように神経細胞が異常に活性化する疾患を、TRPV4の働きを抑制することで治療できるかもしれないとも話しています。

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