大阪府東大阪市にある近畿大学原子力研究所の研究用原子炉が3年ぶりに運転を再開した。東京電力福島第一原子力発電所の事故後、新規制基準の安全審査に合格して運転再開した研究炉は全国初。近畿大学は今後、学生らの実習に活用し、原子力を扱う人材育成を進める。

 近畿大学によると、研究用原子炉は1960年の設置。1961年に初臨界に達し、他の大学など全国の学生の教育に活用されてきた。試験研究用原子炉の新規制基準施行に伴い、2014年2月に運転を停止して原子力規制委員会の審査を受け、2016年5月に合格した。防火窓の新設や安全保護系統ケーブルの分離、固定廃棄物保管室の整備などを進めている。

 文部科学省によると、原子力関連企業への就職を希望する学生の数は、福島第一原発事故をきっかけに激減し、人材確保が差し迫った課題となっている。原子力分野が専門の大学教員も減少傾向にあり、国は安全を支える人材の育成、確保について検討を重ねている。

 伊藤哲夫近畿大学原子力研究所長は「原子力政策の如何にかかわらず、原子力の知識を持つ人材の必要性は高まっている。引き続き原子力を担う人材の育成に全力で取り組む」とのコメントを発表した。

 近畿大学以外では、大阪府熊取町にある京都大学原子炉実験所の研究炉と臨界実験装置も安全審査に合格し、年内に運転再開できる見込み。

大学ジャーナルオンライン編集部

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