人々を笑わせ、そして考えさせた業績に対する「イグ・ノーベル賞」が米国東部時間9月14日、ハーバード大学で発表され、北海道大学農学研究院の吉澤和徳准教授らの研究グループが2017年の「生物学賞」を受賞した。同学でのイグ・ノーベル賞の受賞者は2人目となる。

 受賞理由は、「洞窟棲昆虫におけるメスの陰茎(ペニス)とオスの膣(ヴァギナ)の発見」。吉澤准教授らは、ブラジルの洞窟に棲むチャタテムシの一属、トリカヘチャタテの交尾器が、オスとメスで逆転していることを発見。メスがペニス様の交尾器を持ち、これをオスに挿入することで交尾を行うことを見出した。

 チャタテムシはシラミに近い微小昆虫で、今回の研究対象となったトリカヘチャタテ属のオスは、交尾に際し栄養の含まれたカプセルを精子と共にメスに渡す。一般にオスは多くの精子を作り複数のメスとの繁殖が可能なため、オスの方がメスよりも交尾に対して積極的であるが、トリカヘチャタテにおいては、この栄養を巡ってのメス同士の競争により、オスとメスの交尾に対する積極性が逆転し、メスのペニスの進化を促したと考えられるという。

 今回発見されたような性の役割が逆転した生物の研究は、性選択理論の検証や、性差(オスらしさやメスらしさ)が生じた進化的な背景を探る上で重要な役割を果たすとみられる。

論文情報:【Current Biology】Female Penis, Male Vagina, and Their Correlated Evolution in a Cave Insect(2014年)

北海道大学

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