2013年6月以降、HPV(Humanpapillomavirus:ヒトパピローマウイルス)ワクチンの接種は厚生労働省(以下、厚労省)による積極的勧奨の一時差し控えによって停止状態にある。これにより、接種を見送った女子の将来のHPV感染リスクが高くなること、それに伴い子宮頸がん発症のリスクが高くなることが、大阪大学の上田豊講師(産科学婦人科学)らの研究結果から示されている。

 子宮頸がんは若い女性に多く発症し、毎年約9,000人が診断され、約2,000~3,000人が命を落としている。子宮頸がんの主な発症要因はHPVの感染であり、HPVワクチン接種で子宮頸がんの約6割の減少効果が期待されるが、2013年6月以降、厚労省による積極的勧奨一時差し控えにより、接種はほぼ停止状態にあるという。

 厚労省の積極的勧奨が再開された場合、HPVワクチンの積極的勧奨一時差し控えによる負の影響(子宮頸がん罹患リスク上昇)の軽減と、HPVワクチン再普及が課題となる。そこで上田講師らは、今後HPVワクチンの積極的勧奨が再開された場合に直面する課題への対応策を提言としてまとめ、発表した。

 提言は、「ワクチン接種を見送って対象年齢を超えた女子へ接種を行うこと」、「HPVワクチンを見送った女子と同年代の男子へ接種を行うこと」などのワクチン接種に関する内容と、「子宮頸がん検診の受診勧奨等による、積極的勧奨一時差し控えによる健康被害を軽減すること」、「行動経済学的手法を駆使した接種勧奨にてワクチンの再普及を図ること」などの情報・意識に関する内容からなる。

 今後、厚労省が積極的勧奨を再開する際には、これらの対策をとることで、日本における女性の子宮頸がん発症率の減少が期待される。

論文情報:【Lancet Oncology】Beyond Resumption of Japan’s Governmental Recommendation of the HPV Vaccine

大阪大学

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