近畿大学水産研究所がニホンウナギの人工孵化に成功し、稚魚の飼育期間が50日となった。今後は、全長5~6センチほどのニホンウナギの稚魚「シラスウナギ」まで育てることを第一目標とし、さらに、完全養殖をめざして研究を続ける。

 ウナギは日本の食文化に欠くことのできない食材だが、国内消費量の99%以上を養殖に依存している。ウナギ養殖の元種となる種苗はすべて、シラスウナギと呼ばれる天然の稚魚が用いられるが、近年、漁獲されるシラスウナギの量が著しく減っており、ウナギ養殖に必要な種苗の確保が課題となってる。

 ウナギの完全養殖をめざす研究は古くから行われ、北海道大学で1973年に人工孵化、2010年には水産総合研究センターで完全養殖に成功したが、実用的なコストでの大量生産ができないため、現在も実用化されていない。

 近畿大学水産研究所では、白浜実験場で1976年からウナギの種苗生産研究を開始し、1984年と1998年に採卵・孵化に成功したものの、餌を食べるまでには至らず、その後、研究は中断していた。しかし、2019年3月、和歌山県の浦神実験場において、水産研究・教育機構で開発されすでに公表されている技術情報を基に、ウナギの人工種苗生産をめざして研究を再開。施設の整備を進めるとともに、養殖ウナギを雌雄の親魚候補として6月から人工的に成熟を促進し、9月11日に3尾の雌から合計約60万個の卵を採取し人工授精させ、約4万尾の仔魚が誕生した。さらに9月18日には1尾の雌から約40万個、10月3日には2尾の雌から合計約70万個の卵が得られ、それぞれ数万尾の仔魚が孵化した。孵化仔魚の一部には孵化後7日目から給餌を開始し、現在、50日齢仔魚(全長約20mm)約20尾、43日齢(約18mm)約100尾、28日齢(約12mm)約1,000尾が順調に成長している。

 今後、近畿大学ではプロジェクトチームを立ち上げ、総力を結集してウナギの完全養殖実用化を目指す。そのためにまずは飼料研究を専門分野とする浦神実験場の特性を生かしてウナギ仔魚用の新たな飼料開発に取り組み、養殖用種苗として利用可能なシラスウナギまでの育成に力を注ぐ。

参考:【近畿大学】ウナギの人口ふ化、初期飼育に成功 日本の食卓にウナギを届けるために完全養殖を目指す

大学ジャーナルオンライン編集部

大学ジャーナルオンライン編集部

大学ジャーナルオンライン編集部です。
大学や教育に対する知見・関心の高い編集スタッフにより記事執筆しています。