東北大学大学院生命科学研究科の山元大輔教授・伊藤弘樹研究員らは、ショウジョウバエを実験に用いて、脳と行動の雌雄による劇的な違いが、たった1つの「ロボ」という遺伝子のスイッチを入れるか切るかによって生じることを立証したと発表した。

 ショウジョウバエには雌雄で形の異なる脳細胞があり、この細胞が「雄化物質」を持つ(雄)か持たない(雌)かにより性差が決まる。しかし、「雄化物質」が脳細胞の形を雄化し、「雄化物質」を持たない雌では脳細胞が雌の形になる理由は不明だった。

 fruitlessという遺伝子はFruitlessタンパク質を雄の脳内の細胞で合成するが、雌の脳では合成しないことで脳に性差を生み出す。Fruitless細胞のうちmALという細胞グループは雄では3か所に、雌では2か所に突起を伸ばすという性差がある。今回、神経が突起を伸ばす際に使われる遺伝子を一つずつ人工的に阻害して神経細胞の形の変化を観察した。その結果、ロボ遺伝子の働きが低下すると雌の脳にも雄特異的突起が生じることを発見。これにより、Fruitlessタンパク質が結合相手の目印とするDNAの暗号も判明した。その暗号は16文字の回文構造を持つ塩基配列で、Fruitlessタンパク質がこの構造を持つロボ遺伝子に結合するとロボ遺伝子の働きが抑制された。ロボ遺伝子からこの構造を取り除くと、雄のmAL細胞は雄特有の突起を伸ばせなくなり求愛の動作も異常になった。こうして、脳に性差が生じる仕組みが遺伝子の暗号から解明された。

 Fruitlessタンパク質の標的遺伝子が全て解明されれば、脳の性差と雌雄の行動の違いの原因が明らかになる。ロボ遺伝子はヒトにもあり、人類の脳も同じ仕組みで性差を獲得するのか興味が持たれるという。

東北大学

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