神戸大学、東京大学、静岡県立大学の研究グループが新たなゲノム編集技術「Target-AID」の開発に成功。「DNAを切らなければならない」という従来のゲノム編集技術の課題を解決するものであり、従来法に比べ確実性が高いことから、新たな遺伝子治療手法としての応用も期待される。この研究成果は「Science」にオンライン掲載された。

 生物の遺伝子を直接書き換えて操作することができ、かつ人工的な配列を残さないゲノム編集技術は、近年著しい進歩を遂げ、世界中で研究が進められている。中でも「人工ヌクレアーゼ(DNAの鎖の配列を認識して切断するよう人工的に設計された酵素)」を利用したゲノム編集技術は、標的とするDNAを切断、修復される際に目的の遺伝子が改変されることを狙ったもので、遺伝子操作が難しい生物材料においても有効であることから、動物や植物などを中心に導入が進んでいる。一方でDNAの修復過程で予測しない配列変換が起きることもあり、染色体の切断によって細胞が死んでしまう場合もあるという課題があった。

 今回、研究グループが開発した新ゲノム編集技術は、従来の人工ヌクレアーゼを利用したゲノム編集技術からヌクレアーゼ活性を除き、脱アミノ化酵素であるデアミナーゼを付加して人工酵素複合体を構築。これをDNAの特定部分に直接反応させ、点変異(DNAの一つの塩基が別の塩基に置き換わる突然変異)を効率よく起こすことで、DNAを切断することなく遺伝子機能を改変することに成功した。DNAが切断されるリスクは極めて低いとされており、従来のヌクレアーゼ型に比べ細胞毒性が大幅に低減することも確認したという。

 この技術により効率よく意図した書き換えができるようになれば、より高度で多様なゲノム編集操作が実現可能となる。また細胞に過度の負担がかからず安全性が高いことから、植物の品種改良や新薬開発などを加速させる技術として期待される。将来的にはアルツハイマー病など、根本的な治療法が確立されていない疾患に対する新たな遺伝子治療手法として応用も考えられている。

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大学ジャーナルオンライン編集部

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