新潟大学大学院医歯学総合研究科の小松雅明教授、石村亮輔客員研究員らは、原因不明とされてきたてんかんや小頭症を伴う重度発達障害がたんぱく質修飾活性化酵素「UBA5」をコードする遺伝子の変異によるものという研究結果を発表した。ヘルシンキ大学、新潟大学との共同研究で解明されたもので、本研究成果は「The American Journal Human Genetics」誌に掲載された。

 高等生物では遺伝子配列に基づいて合成されたたんぱく質が直接的に機能を発揮することは少なく、多くはリン酸化、糖鎖付加、メチル化などさまざまに修飾されることで機能の多様性が発揮される。例えば「UBA5」はユビキチン様たんぱく質UFM1を活性化する酵素である。UFM1は活性化されたのちUFC1酵素に転移され、最終的には細胞内の標的たんぱく質を修飾し、たんぱく質の機能変換を担うと考えられている。

 研究グループでは、てんかんや小頭症を伴う重度発達障害患者を持つ欧州の5家系を特定して遺伝子解析を行ったところ、前述のUBA5をコードする遺伝子に変異がみられることを発見した。患者由来の変異を持つUBA5たんぱく質はその酵素活性が減少し、結果的にUFM1によるたんぱく質修飾も阻害されていたという。さらに、特異的にUFM1遺伝子を欠損させたマウスを作成し解析したところ、神経細胞死を伴う小頭症を発現、生後数日で死亡するという結果が得られた。以上から、UFM1たんぱく質修飾機構の異常が、遺伝性重度発達障害を引き起こすことが示唆される。

 今回特定したUBA5の遺伝子変異をもつ割合は欧州人で0.28%といわれ、ここからUBA5変異をもつ重度発達障害患者が多く存在することが考えられる。また最近、小児性小脳変性疾患患者をもつ中国の1家系からもUBA5の遺伝子変異が報告された。今後、日本人でUBA5遺伝子変異をもつ患者を検索すると同時に、UBA5酵素活性を高める薬剤のスクリーニングを行うことで、臨床応用をめざすとしている。

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大学ジャーナルオンライン編集部

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