■産学連携サービス経営人材育成事業とは?

 日本のGDPの3/4を占めているサービス産業の生産性向上・競争力強化が必要不可欠となってきています。その一方、人口減少と少子高齢化等で人手不足が深刻化し、サービス産業において企業内教育訓練が縮小しています。

 さらに産業構造変化・技術革新が進む中、個々の人材に求められる能力は複雑・高度化し、大学等におけるサービス産業の人材育成が重要であると位置づけられました。

 すでにアメリカでは、コーネル大学ホテル経営学部やカリナリー・インスティテュートといった、サービス産業の経営人材・マネジメント人材育成のための専門教育機関が充実していますが、日本ではこのような取り組みが遅れているとされています。

 そこで、平成27年度から経済産業省が「産学連携サービス経営人材育成事業」として、次代の経営人材・マネジメント人材を育成する専門的・実践的な教育プログラムを産業界と連携して開発する大学への支援を行うことになりました(平成31年度までの5年間で50校支援目標)。

 

■平成27年度の採択の状況は?

 平成27年度では67件の申請があり、17大学が採択されています。これらの採択された中には、立命館大学食科学部(仮称)(※平成30年度新設目指す)、東洋大学国際観光学部(※平成29年度新設予定)、中村学園大学栄養科学部フード・マネジメント学科(※平成29年度新設予定)のように今後新設される学部学科コースが含まれている大学もあります。

 また、千葉商科大学「インキャンパス・サービスビジネス・ラーニング」のように既存学部や学内施設を活かしたプログラムで採択されている大学や、宮崎大学「食を中心とした総合レジャー産業を担う人材育成プログラムの構築」のように、食や観光の地域資産(資源)を活かした地方創生にも関係するプログラムも採択されています。

 
 

平成27年度 採択事業者一覧

事業者名 事業名
小樽商科大学 地域包括ケアシステムの中核を担う医療経営人材育成事業
弘前大学 めざせ!じょっぱり起業家。青森の魅力を高める中核人材育成事業
千葉商科大学 インキャンパス・サービスビジネス・ラーニング
芝浦工業大学 学び直しと価値共創を繰り返す中小製造業サービス化エコシステム
ハリウッド大学院大学 「美」のサービスイノベーション人材を育成するプログラムの開発
東洋大学 一般社団法人日本旅行業協会 産学連携による観光人材育成プログラム開発事業
慶應義塾大学 サービスデザイン学の講義及びそれを実行するプロジェクトの開発
事業創造大学院大学 情報化教育の強化から見たサービス経営人材育成
四日市大学 産学連携による伊勢志摩『おもてなし経営』のための人材育成事業
立命館大学 食サービス分野における高度マネジメント人材育成
関西学院大学 診療所を中核とした地域医療経営人材育成プログラムの開発
山口大学 地域と共進化する実践型地域資産活用サービス経営人材育成事業
愛媛大学 産学官連携による観光サービス産業の経営管理を担う人材育成事業
九州工業大学 地域資源(ストック)活用型サービス経営人材育成事業
中村学園大学 栄養科学と流通科学の融合による食産業サービス経営人材の育成
宮崎大学 食を中心とした総合レジャー産業を担う人材育成プログラムの構築
琉球大学 沖縄21世紀ビジョンを担うグローカルサービス経営人材の育成

 
 5年間で50校の支援をするということになっていますので、平成27年度が17件の採択ということを考えると、平成28年度も多くの申請があると予想されます。
 サービス経営人材育成となると、商学部・経営学部・観光学部・農学部などが主な対象学部になり、観光を絡めた地域の6次産業化の取り組みなどが想像しやすいところだと思います。文学部や理工学部など一見するとサービス業と結びつきがしづらい学部においても、カリキュラムを他学部とうまくコラボレーションさせることで、サービス経営人材育成になるものができるかもしれません。

 平成28年度の申請でどのようなものが出てくるか、とても楽しみです。

経済産業省 平成28年度産学連携サービス経営人材育成事業に係る補助事業者(大学等における「サービス経営人材育成」教育プログラム開発)の公募について

加藤健次

加藤健次

ユニバースケープ株式会社 常務取締役。大学ジャーナルオンライン論説委員。
高等教育機関の調査分析を得意とし、20年以上もの間、大学・短大・専門学校を中心として学生募集支援・ソリューション提供を行う。
講演・セミナーも多数。