超伝導体を用いると、電気抵抗によるエネルギー損失をゼロにすることができる。中でも、超伝導転移温度が液体窒素温度を上回る銅酸化物高温超伝導体は、冷却材の費用が大幅に削減可能で、無損失送電線や超伝導電磁石の材料として実用化の研究が進められてきた。

 鉛やアルミニウムにおいては、反発しあう電子の間を格子振動が仲介することによって超伝導が発現する。一方、銅酸化物における高温超伝導を発現する「立役者」の正体は特定が難しく、激しい論争が15年以上も続いていた。今回、大阪府立大学、広島大学などの研究グループは、この「立役者」の決定的な証拠をとらえることに成功した。

 研究グループは、高輝度シンクロトロン放射光と世界最高水準の高分解能・角度分解光電子分光装置を組み合わせて、銅酸化物高温超伝導体の中の電子の速度変化を精密に観測し、微細構造の分離を実現。さらに、正孔添加量を極度に増やすことで電子と「立役者」のやりとりの痕跡をくまなく観測することに成功した。その痕跡は格子振動の分布と完全に一致しており、高温超伝導を担う電子が最も強く結びついているのが格子振動であることが明らかになった。

 高温超伝導に関与する格子振動の全容を解明し長年の論争を解決したこの成果は、電子と格子振動のやりとりの観点からさらなる高温超伝導体の探索を導く指針を与え、高温超伝導体を用いた材料開発を促進するものと期待されている。

論文情報:【Scientific Reports】A New Landscape of Multiple Dispersion Kinks in a High-Tc Cuprate Superconductor

関東地方の大学

明治10年設立。日本で最も長い歴史を持ち、日本の知の最先端を担う大学

東京大学は東京開成学校と東京医学校が1877(明治10)年に統合されて設立されました。設立以来、日本を代表する大学、東西文化融合の学術の拠点として、世界の中で独自の形で教育、研究を発展させてきました。その結果、多岐にわたる分野で多くの人材を輩出し、多くの研究成[…]

中国地方の大学

グローバル人材を持続的に輩出。知を創造する世界トップ100の大学へ

「平和を希求する精神」、「新たなる知の創造」、「豊かな人間性を培う教育」、「地域社会・国際社会との共存」、「絶えざる自己変革」の5つの理念の下、11学部11研究科を擁する日本でも有数の総合研究大学。未知の問題に自ら立ち向かう「平和を希求する国際的教養人」の育成[…]

大阪府立大学

「高度研究型大学―世界にはばたく地域の信頼拠点―」 教育・研究・社会貢献に取り組み、リーダーシップのある学生を社会に輩出する。

国際的な考えを持つためには、何よりも幅広い教養が必要です。 「実学」と「リベラルアーツ」の伝統を有する本学は、組織的な教育体制の整備とともに、学生に対する手厚い指導に基づく教育力および教員個々の研究力を一層深めることにより、世界に羽ばたくリーダーシップのある[…]

大学ジャーナルオンライン編集部

大学ジャーナルオンライン編集部

大学ジャーナルオンライン編集部です。
大学や教育に対する知見・関心の高い編集スタッフにより記事執筆しています。