東北大学の中山亨教授らは、ダイズの健康機能成分として知られるイソフラボンの一種、ダイゼインの生成にまつわる長年の謎を解き明かした。

 ダイズに含まれるイソフラボンであるダイゼインとゲニステインは、習慣的に摂取することによりホルモン依存性のがんや骨粗鬆症等の予防に有効であることが示唆されている。
特にダイゼインは根や種子で高度に蓄積しているが、その生成には謎があった。ダイゼインが生成されるためには、カルコン合成酵素(CHS)反応の途上にある「中間体」にカルコン還元酵素(CHR)が作用する必要があるが、「中間体」はきわめて不安定で、ただちに自発的に別の物質に変換されてしまい、最終的にゲニステインに導かれてしまうのだ。ダイズの根ではダイゼインがゲニステインのおよそ10倍以上含まれているため、90%以上の効率で「中間体」がCHSからCHRへ渡されているはずだが、この高効率な受け渡しのメカニズムが長年の謎だった。

 本研究では、CHRのアイソザイム(活性がほぼ同じでありながら分子としては別種である酵素)のうちCHR5が、イソフラボン生成の鍵となる反応を司る膜結合型酵素イソフラボン合成酵素(IFS)と結合できることを発見した。同グループは以前にCHSとIFSが結合できることも明らかにしており、ここから、CHSとCHRがそれぞれIFSとの結合を介して酵素複合体(メタボロン)を形成することを見いだした。これにより、互いに近傍に存在でき、「中間体」の高効率な受け渡しが可能となるのだという。

 これまで推定はされていたものの実証には至っていなかったメタボロンの機能的重要性を明確に示したこの成果は、代謝工学の進展にも大きく貢献するものとして注目される。

論文情報:【The Plant Journal】Involvement of chalcone reductase in the soybean isoflavone metabolon: identification of GmCHR5, which interacts with 2‐hydroxyisoflavanone synthase

東北大学

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