総合研究大学院大学の武田浩平特別研究員らの研究グループは、動物の雌雄ペアは、これまでに繁殖していないつがいほど息の合ったダンスを踊ることを実証的に明らかにした。これは、洗練されたダンスはお互いの絆を強め、繁殖を促進するという、これまでの定説を覆すもので、つがいが踊るダンスの役割を示した世界で初めての研究となる。

 カイツブリやアホウドリなど多くの鳥類において、繁殖つがいである雌雄が一緒に洗練されたダンスを踊るが、その役割は不明だった。1942年に、ダンスはつがいの絆を強め維持する働きをもつという「つがいの絆」(pair bond)仮説が提唱されて定説となったが、実証的に検証されていなかった。

 今回、北海道釧路で二年間の調査を行い、野生タンチョウ21つがいを観察。12月から3月、越冬期の給餌場で行うペアダンス99例をビデオにより記録し、情報理論を用いて解析・定量化した。

 その結果、繁殖の時期に近づくほど、ダンスを踊る時間が長くなり、他の特徴は変化しなかった。さらに、過去に繁殖経験が少ない個体の形成するつがいほど、息の合った協調性の高いダンスを踊っていた。その他のダンスの特徴は過去の繁殖履歴とは無関係だった。また、つがいが次の繁殖に成功するかどうかは、ダンスの協調性を含めてどの特徴とも関連がなかった。これらの結果は、「つがいの絆」仮説の予測とは逆であるか一致しないことが明らかになった。

 ペアダンスには、個体の発達や生理的状態との関係や、タンチョウの洗練化・複雑化したダンスの進化過程など、まだ謎が多いという。今後、さらに詳細な研究により、ヒトを含めた動物の複雑なコミュニケーションを理解する鍵になるとしている。

論文情報:【Behavioral Ecology】Uncoordinated dances associated with high reproductive success in a crane

大学ジャーナルオンライン編集部

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