ショッピングモールなどの売り場において、欧米で行われたこれまでの研究では、垂直方向よりも水平方向に陳列された商品の方が消費者の購買を促進すること(水平陳列の優位性)が一貫して報告されてきた。

 しかし今回、広島大学大学院総合科学研究科の有賀敦紀准教授は、「消費者の商品選択における優位な陳列方向は読みの文化に依存する」という新たな仮説を立て、実際に、水平陳列の優位性は普遍的な現象ではなく、欧米人の横読みの文化に依存している可能性を示した。そして、縦読みと横読みの両方の文化を持つ日本人では、垂直・水平陳列の優位性は状況に応じてどちらも存在し、外的に操作可能であることを新たに発見した。

 有賀准教授は、10種類のアイスクリームを垂直あるいは水平方向に配置した画像を提示して、購買場面を想定した商品選択を行わせるという実験を実施した。その結果、日本人実験参加者の商品選択は、垂直陳列と水平陳列で違いはなく、日本人は水平陳列の優位性を示さないことが判明した。

 続いて、日本人では垂直・水平陳列の優位性は状況(直前の読みの経験)に応じて生じると予測し、アイスクリームの画像を提示する直前に、実験参加者に縦書きあるいは横書きの文章を黙読させた。すると、予測通り、黙読の方向と一致した陳列(縦読みでは垂直陳列、横読みでは水平陳列)で商品選択が促進されることが分かった。

 これにより、日本人の商品選択における効果的な陳列方向は、直前の読みの経験によって決まり、外的に操作可能であることが明らかとなった。実際のフィールド(現実の売り場やネット通販)における検討は今後の課題だが、今回得られた知見は、消費者の購買を促進するための科学的手法として、マーケティング実務に応用できる可能性がある。

論文情報:【PLOS ONE】Reading habits contribute to the effects of display direction on product choice

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