愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センターをはじめとする共同研究グループは、マントル中の主要な高圧型鉱物であるCaSiO3ペロブスカイトの弾性波速度の測定に成功し、この成果を国際科学誌「Nature」に発表した。

 沈み込む海洋プレートは、マントル物質が部分的に融けて固まった玄武岩質の海洋地殻と、融け残りの岩石であるハルツバージャイト岩からできていると考えられている。海洋プレートはマントル中の深さ660 km付近の地震学的な不連続面付近まで沈み込むことが知られているが、その先の挙動に関しては十分に解明されていない。これまでにプレートやマントルを構成する高圧型鉱物の弾性波速度の測定が進められてきたが、唯一CaSiO3ペロブスカイト(CaPv)と呼ばれる高圧型鉱物だけは測定が困難だった。それは、この鉱物の結晶構造が常圧では維持できず、アモルファス(非結晶)へと変化するからだ。

 そこで今回、同グループは、新たな手法に基づき、CaPvの弾性波速度測定を直接測定することに初めて成功した。その結果、この高圧型鉱物は従来予想されていたよりも、はるかに遅い弾性波速度を示すことが明らかになった。マグマの発生ではなく、CaPvを多く含む玄武岩質の海洋地殻物質がこの領域に多く存在するため、このような低速度領域になることが明らかになった。
同様の手法で弾性波速度測定を行い、地球科学の大きな謎である下部マントルの化学組成の解明に重要な情報を与えることができると期待される。

論文情報:【Nature】Sound velocity of CaSiO3 pervskite suggests the presence of basaltic crust in the lowermantle

東京工業大学

時代を創る知を極め、技を磨き、高い志と和の心を持つ理工人を輩出し続ける理工大学の頂点

東京工業大学は産業の近代化が急務となっていた1881(明治14)年に東京職工学校として設立されました。設立以来、優秀な理工系人材と卓越した研究成果を創出し続け、現在も日本の理工系総合大学のトップにいます。東京工業大学は高度な専門性だけでなく、教養学を必修とする[…]

大学ジャーナルオンライン編集部

大学ジャーナルオンライン編集部

大学ジャーナルオンライン編集部です。
大学や教育に対する知見・関心の高い編集スタッフにより記事執筆しています。