国立科学博物館と北海道大学の研究グループが、新種のクジラ「クロツチクジラ」の存在を確認した。

 北海道の捕鯨関係者の間では、通常の「ツチクジラ」と比べて色が暗く小さい「クロツチ」あるいは「カラス」と呼ばれるものがいると言われていたが、その正体はこれまで科学的には明らかになっていなかった。

 今回、北海道大学の松石隆教授が主催する漂着鯨類調査グループ「ストランディングネットワーク北海道」(SNH)が収集した個体の調査・分析の結果、これまで認識されていなかった種の存在が明らかになった。本研究者らは以前に、ツチクジラ属の特徴があるものの、外部形態が従来知られているツチクジラとは異なる漂着個体を分析した。既知のツチクジラおよびミナミツチクジラのDNAシークエンスのいずれとも明らかな相違が確認され、ツチクジラ属の未知種存在の可能性が浮かび上がった。

 この未知種を新種として記載するには、その形態学的特徴を把握し、総合的な解析によってツチクジラ属の既知の二種(ミナミツチクジラおよびツチクジラ)との関係を明らかにする必要がある。そこで本研究では、未知種を全身骨格標本とし、形態学的特徴の把握と計測結果の多変量解析などを行い、さらに合衆国自然史博物館、大英自然史博物館などに所蔵のツチクジラ属標本を精査し、比較、検討を行った。

 この結果、未知種は既知種に対し、体長が顕著に小さい、頭骨形態が明らかに異なるなど、形態学的にミナミツチクジラおよびツチクジラのいずれとも明確に異なることが示された。遺伝子情報の分子系統解析でも、未知種と既知種の間に有意な差異が認められることが確認された。以上を総合して、この未知種鯨類は独立の種として世界のクジラに加えるべきものであるとの結論に到達した。

 本種は学名Berardius minimus、和名クロツチクジラと命名され、英名はこれから決定されるという。
 
論文情報:【Scientific Reports】Description of a new species of beaked whale (Berardius) found in the North Pacific

北海道大学

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大学ジャーナルオンライン編集部

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