「ゲノム」とは生物の設計図であるDNAの塩基配列情報を指すが、環境などによって後天的に起こる遺伝子の変化を「エピゲノム」と呼ぶ。このうち、DNAにメチル基という分子が付着する「DNAメチル化」は飲酒・ストレスなどさまざまな要因が影響し、生活習慣病やがん、うつなどの発症に関連することが近年明らかになっている。ただ、日本人のDNAメチル化の状態や個別の違いを大規模かつ網羅的に調査した研究はこれまでなかった。

 東日本大震災の復興支援事業「東北メディカル・メガバンク計画」の一環として、岩手県内被災地を中心に大規模な健康調査を実施する岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構の研究チームは、このたび東北大学東北メディカル・メガバンク機構と共同で、DNAメチル化情報の100人規模の高精度な解析に初めて成功。一部データを公開している。

 同研究チームでは、東北メディカル・メガバンク計画に参加する約100名を対象に全DNAメチル化の解析を試みた。98%以上という高純度で血液の中から血液細胞を分別収集し、エピゲノムの特徴が大きく異なる2つの血液細胞からDNAとRNAを採取。DNAのゲノム(遺伝子情報)、トランスクリプトーム(遺伝子転写情報)、エピゲノムを解析した結果、2,400万箇所のDNAメチル化部位を同定するとともに、個人や細胞ごとの違いまで明らかにすることができたという。

 さらに同機構ではこれら3つの情報を合わせた「3層オミックス(網羅的生体分子情報)参照パネル」をウェブサイトで公開。DNAメチル化解析の基準とすることで、患者のエピゲノム異常や環境によるエピゲノム変化の特定などへ応用されることが狙いだ。DNAメチル化と病気や環境との関連性を調べることで、発症の予防、治療法の開発に貢献することが期待される。

東北大学

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