縄文時代に暴力による死亡率が1.8%と極めて低かったことが、山口大学と岡山大学の研究グループの調査で明らかになりました。他国や日本の他の時代と比べると、5分の1以下の低さで、長く平和な時代が続いたことがあらためて確認されました。研究成果は英科学雑誌「バイオロジー・レターズ」に掲載されました。

 岡山大学によると、調査には山口大学国際総合科学部の中尾央助教、岡山大学大学院社会文化科学研究科の松本直子教授らが当たりました。

 研究グループは約1万年にわたる縄文時代の受傷人骨データを全国242カ所から2,582点収集し、暴力による死亡率を算出しました。このうち、傷を受けた痕跡があったのは23点で、暴力による死亡率は1.8%と推計されました。弥生時代など日本の別の時代や他国では、暴力による死亡率が10数%に達することが多く、縄文時代の5倍以上となっています。研究グループは縄文時代に世界でも特異なほど長い平和が続いていたとみています。

 ヨーロッパでは狩猟採集民の大量虐殺を示唆する人骨が発掘され、先史時代から「戦争が人間の本能である」とする主張が根強く広まっています。しかし、研究グループは戦争が他の要因によって発生し、人類全体に一般化できるものではないと考えています。

 さらに今後、縄文時代の研究を通じ、戦争の原因をどこに求めれば良いのか、考古学や人類学の観点から進める必要があるとしています。

大学ジャーナルオンライン編集部

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